冬の訪れとともに、ドライバーにとって最も過酷な路面状況である「雪道」のシーズンがやってきます。普段運転に慣れている方であっても、積雪や凍結路面では一瞬の判断ミスが重大な事故に繋がりかねません。今回は、最新の知見に基づいた雪道走行の「新常識」と、万が一の立ち往生に備えるための知識を詳しく解説します。
1. エンジンブレーキの「新常識」:2速への過信は禁物
かつての雪道運転では「下り坂ではエンジンブレーキを多用する」のが定石でした。しかし、現代の車においては、その考えを改める必要があります。
強いエンジンブレーキ(特に2速などへのシフトダウン)を使用すると、駆動輪にのみ急激な制動力がかかり、車のバランスを崩してスピンを誘発する恐れがあります。前輪駆動車ならハンドルが効かなくなり、後輪駆動車ならスピン状態に陥るリスクが高いのです。最近の車に搭載されているABS(アンチロック・ブレーキ・システム)や姿勢制御装置は、フットブレーキを介して4輪を最適に制御します。そのため、時速20km以上の速度域では安易に2速へ落とさず、フットブレーキを優しく、あるいはABSに任せて踏むのが今の常識です。
2. 見えない恐怖「ブラックアイスバーン」と場所の特性
路面状況の中でも特に危険なのが、濡れたアスファルトに見えて実は薄い氷が張っている「ブラックアイスバーン」です。
• 注意すべき場所: 地面からの熱が遮断される「橋の上」や「トンネルの出入口」、日光が当たらない「日陰」などは特に凍結しやすいポイントです。
• 4WDの過信は禁物: 4WD車は発進や登坂には優れていますが、「止まる性能」は2WD車と大差ありません。むしろ車重が重い大型4WD車の場合、下り坂での制動距離は2WD車より長くなる傾向にあります。
3. 立ち往生した際の生存戦略:EV vs ガソリン車
大雪で車が動けなくなった際、車内は「命を守る避難所」となります。
ガソリン車最大の敵は「一酸化炭素中毒」です。マフラーが雪で埋まると、排気ガスが車内に逆流し、わずか16分で致死量に達するほどの濃度になることがあります。エンジンをかける場合は、定期的にマフラー周辺を除雪することが不可欠です。
一方、電気自動車(EV)は一酸化炭素中毒のリスクはありません。暖房効率を心配する声もありますが、JAFの実験では、バッテリー残量70%の状態からオートエアコン(25℃設定)を使い続けても約10時間は稼働可能です。シートヒーターや電気毛布を併用すれば、さらに長時間、電力消費を抑えながら待機することができます。
4. 命を守る「三種の神器」と事前準備
大雪予報の日に外出する際は、最低限以下の3つを車に積んでおきましょう。
1. スコップ: マフラー周辺の除雪や脱出に不可欠です。
2. 携帯トイレ: 生理現象を我慢すると健康を害し、エコノミークラス症候群のリスクも高まります。
3. 水と食料: チョコや菓子パンなど、高カロリーで日持ちするものが推奨されます。
加えて、防寒着や毛布、スマートフォン用のモバイルバッテリーも忘れずに携行してください。
まとめ
雪道運転の基本は「急」のつく操作(急ハンドル、急ブレーキ、急加速)を避け、車間距離を通常の2〜3倍確保することです。また、NEXCO中日本が提供する「iHighway中日本」や「みちラジ」などのアプリを活用し、出発前にリアルタイムの交通情報を収集することも重要です。
雪道での運転は、どれだけ経験があっても「油断」が最大の敵となります。常に最悪の事態を想定し、万全の準備を整えてハンドルを握りましょう。

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