日本一の山が「世界一の難所」になる時。冬の富士山登山の恐ろしさと守るべき鉄則

富士山は、夏山期間には毎年約30万人前後が訪れる人気の観光地です。しかし、登山道が全面通行止めとなる閉山期間(9月中旬〜翌年7月上旬)の富士山は、全く別の顔を持ちます,。この時期の富士山は、エベレストを含む8000m級の山々に匹敵、あるいはそれ以上の危険を伴うと言われることさえあります,。

1. 登山家すら震え上がる「冬の富士山」が危険な理由

冬の富士山が危険視される最大の理由は、その厳しい気象条件と、独立峰特有の地形にあります。

極限の低温と暴風: 冬期の富士山頂付近では、気温が氷点下30度を下回り、風速30m以上の強風が吹き荒れることも珍しくありません,。独立峰であるため風を遮る山がなく、登山者はまともに暴風にさらされ、容易にバランスを崩されます,。

「アイスバーン」の恐怖: 冬の斜面はカチカチの氷で覆われ、スケートリンクのような状態になります,。こうなると、雪山登山の必須装備であるアイゼン(滑り止め)やピッケル(杖)の刃すら立たなくなります,。

制止不能な滑落: 一度足を滑らせれば、100km近いスピードで滑り落ち、露出した岩などに叩きつけられます。この状態では自力で停止することはほぼ不可能です。

2. 生配信中の悲劇:2019年富士山滑落事故

記憶に新しい悲惨な事故の一つに、2019年10月の「ニコニコ生放送」中の滑落事故があります。47歳の男性が山頂付近から滑落する様子がリアルタイムで配信され、視聴者が通報しましたが、2日後に遺体で発見されました,。

この事故の背景には、**「軽装」と「知識不足」**という致命的な問題がありました。男性はスニーカーのような柔らかい靴を履き、アイゼンやピッケルなどの冬山装備を持たない「夏山に近い装備」で登っていました,,。また、手が思うように動かない低体温症の兆候を見せながらも、配信を続けていました,。この事故は後に、不名誉な死を遂げた人物に贈られる「ダーウィン賞」に選ばれるなど、世界中に衝撃を与えました,。

3. プロでも逃れられない自然の脅威

「装備さえ万全なら大丈夫」という考えも、冬の富士山では通用しません。2009年には、世界的な挑戦を続けていた元F1レーサーで登山家の片山右京氏のチームが、標高2750m付近で野営中に強風に煽られ、テントごと約200m滑落しました,。ベテラン揃いのチームであっても、自然の猛威の前には無力であり、同行した2名が凍死するという悲しい結果となりました。

4. 命を守るためのガイドラインとルール

富士山では、遭難事故防止と環境保全のため、**「富士登山における安全確保のためのガイドライン」**が定められています。特に閉山期の登山には、以下の厳格なルールが課されています。

万全な準備がない者の登山禁止: 十分な技術、知識、装備(アイゼン、ピッケル、防寒着等)、計画を持たない者の登山は禁止されています,。

登山計画書の提出: 自己責任において身の安全を守るため、必ず「登山計画書」を警察等に作成・提出しなければなりません,。

携帯トイレの持参: 山小屋やトイレは全て閉鎖されているため、排泄物は必ず自分で回収し、持ち帰る必要があります,,。

また、閉山中の富士山五合目〜山頂の登山道は、道路法第46条に基づき**「通行禁止」**となっており、違反すれば罰則の対象となる可能性もあります。

結論:山への敬意と賢明な判断

富士山は私たちに美しい姿を見せてくれますが、同時に無慈悲な破壊者にもなります。最新の気象情報を確認し、少しでも不安があれば「撤退する勇気」を持つことが、登山者に求められる最も重要な資質です,。

冬の富士山は、**「急傾斜のスケートリンクの上で、大型台風並みの暴風にさらされながら歩く」**ようなものです。その過酷さを正しく理解し、安易な気持ちで足を踏み入れないことが、あなた自身の、そして救助にあたる人々の命を守ることにつながります。

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注:本記事の内容は、富士山における適正利用推進協議会が策定した「富士登山における安全確保のためのガイドライン」等の公的資料に基づいています,

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この記事を書いた人

電子機器の試作会社、老舗出版会社、通信系IT企業を経由して、現在は兼業ブロガー。SDGsに貢献しつつ、生活の中で課題をもって購入した商品のレビュー、プチ旅行の紹介、忘れつつある記憶の記録など、おおむね個人の趣味を綴ったブログにしたいと思います。

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