はじめに
日産自動車の歴史において「NX」という名称は、常に既存の枠組みにとらわれない革新的なモデルに与えられてきました。1990年に誕生したNXクーペは、その独創的なスタイリングで当時の若者を驚かせ、そして今、中国市場を皮切りに**新型SUV「NX8」**としてその名が再び脚光を浴びています。本記事では、過去から未来へと繋がる日産NXの系譜を深掘りします。
1. 1990年代のアイコン:日産・NXクーペ
1990年1月に登場したNXクーペは、7代目サニー(B13型)をベースにしたスペシャルティカーです。デザインを手がけたのはカリフォルニアの日産デザインインターナショナル(NDI)で、丸みを帯びたカジュアルなエクステリアとオーバルシェイプのヘッドライトが最大の特徴でした。
• ユニークな装備とコンセプト: キャッチコピーは「タイムマシンかもしれない」。セクレタリーカーとして企画されたこの車には、ドア開口部に傘の収納スペースが設けられるなど、遊び心あふれる装備が搭載されていました。また、1.5Lモデルにはデジタルパネルメーターが設定され、未来感を演出していました。
• 世界での評価と走り: 日本ではS13シルビアの陰に隠れ販売は振るいませんでしたが、北米では「NX1600/NX2000」として高い人気を博しました。特に2.0LのSR20DEエンジンを搭載したNX2000は、その剛性の高いシャシーとLSD(リミテッドスリップデフ)により、当時のFF車で最高クラスのハンドリング性能を持つと評価されました。1992年には、米『Road & Track』誌のテストで、アキュラ・NSXやポルシェ911といった名だたるスポーツカーと比較されるほどの実力を示しました。
2. 30年の時を経て蘇る名:新型SUV「NX8」
2025年12月、日産の中国合弁会社である東風日産は、新世代の「N」シリーズ第3弾として、ピュア電動SUVのNX8を世界初公開しました。かつてのコンパクトなクーペから、全長4,870mmに及ぶ中大型SUVへと姿を変え、「NX」の名が現代に復活したのです。
• 圧倒的なテクノロジー: NX8は、日産初となる800Vシステムを採用しています。これにより、わずか15分以内でバッテリーの10%から80%までを充電できる超急速充電に対応する見込みです。さらに、LiDAR(ライダー)を搭載することで、市街地での高度な運転支援(シティNOA)を実現するなど、アリアを凌駕するスペックを備えています。
• 多彩なパワートレイン: BEV(純電気自動車)モデルに加え、1.5Lターボエンジンを搭載した**EREV(レンジエクステンダーEV)**もラインナップされます。BEVモデルは最高出力292psから340psを発揮し、航続距離は最長650km(CLTC基準)に達します。
3. 日本導入への期待
現在、NX8は中国市場向けとして発表されていますが、その絶妙なサイズ感(エクストレイルより長く、パスファインダーより短い)と高い実用性から、日本への輸出も期待されています。日産の「N」シリーズは他市場への展開も報じられており、NX8が日本市場における電動SUVの新たな本命となる可能性は十分にあります。
結びに代えて:NXという名のDNA
かつてのNXクーペが「タイムマシン」という言葉で未来を夢見せたように、最新のNX8は最先端のEV技術で私たちの移動を劇的に変えようとしています。30年の歳月を経て、形はクーペからSUVへと変わりましたが、日産が「NX」に込めた「新しい体験を届ける」という精神は、今も脈々と受け継がれています。
日産の次なる挑戦であるNX8が、私たちの街を走る日はそう遠くないかもしれません。

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