ラスベガスで開催されたテクノロジー見本市「CES 2026」において、AMDはコンピューティングの未来を決定づける強力なラインアップを発表しました。リサ・スーCEOの基調講演で披露されたのは、**AI処理能力を極限まで高めた「Ryzen AI 400シリーズ」と、内蔵GPUの常識を覆す「Ryzen AI Maxシリーズ」**です。本記事では、これらの新チップが私たちのデジタルライフをどう変えるのか、ソースに基づき詳細に紐解いていきます。
Ryzen AI 400シリーズ:洗練されたAIモンスター
「Gorgon Point」の開発コードネームで知られるRyzen AI 400シリーズは、前世代のStrix Pointアーキテクチャをベースに、プロセスノードとダイ設計を徹底的に最適化した「リフレッシュ版」です。
ハードウェアの三要素として、「Zen 5」CPUコア、「RDNA 3.5」グラフィックス、そして**「XDNA 2」NPUアーキテクチャを継承しつつ、動作クロックとメモリ帯域を大幅に引き上げています。最上位モデルのRyzen AI 9 HX 475**は、ブースト時最大5.2 GHzのCPUクロックと3.1 GHzのGPUクロックを実現し、LPDDR5x-8533メモリに対応しています。
特筆すべきはAI処理能力です。NPU性能は最大60 TOPS(1秒間に60兆回の演算)に達し、前世代の55 TOPSからさらに向上しました。AMDによれば、競合するIntelの「Lunar Lake」ことCore Ultra 9 288Vと比較して、マルチスレッド性能で1.3倍、コンテンツ制作で1.7倍、ゲーム性能で1.1倍のスコアを叩き出しています。
Ryzen AI Maxシリーズ:内蔵GPUの極北「Strix Halo」
AMDはさらに、ハイエンドモバイル市場向けに**「Ryzen AI Max」ファミリーを拡充しました。このチップの最大の特徴は、従来のモノリシック構造(1つのダイ)ではなく、2つのCPUダイと1つのGPU/IODダイを統合したチップレット構造**を採用している点です。
フラッグシップのRyzen AI Max+ 395は、16コア32スレッドのCPUに加え、なんと**40基のCU(Compute Unit)**を備えたRadeon 8060Sグラフィックスを内蔵しています。これは、Strix Pointの最大16基と比較して2.5倍の規模であり、メモリバス幅も256-bitをサポートすることで、従来の2倍の帯域幅を実現しています。
この強力なハードウェア構成により、大型のAIモデルである「Llama 3.1 70B」の推論においても高いパフォーマンスを発揮します。AMDは、このチップがAppleのM4 ProやNVIDIAのdGPU(離散GPU)を搭載したシステムに対する強力なカウンターになると示唆しています。
Copilot+ PCとしての完成度と市場への影響
2026年は、Microsoftが提唱する「Copilot+ PC」が標準となる年です。AMDの新プロセッサはすべて40 TOPS以上のNPU性能という要件を余裕でクリアしており、ユーザーは「Ryzen AI」の名称がついた製品を選ぶだけで、最新のAI機能(Live CaptionsやClick to Doなど)を享受できます。
今回、AMDは上位から下位まで7つのSKU(Ryzen AI 9からAI 5まで)を一斉に投入しました。これにより、ハイエンドなプロ向けノートPCから、一般ユーザー向けの普及価格帯モデルまで、Copilot+ PCの選択肢が劇的に広がることになります。
また、ゲーミングデバイス市場においても、Zen 5とRDNA 3.5を組み合わせた**「Ryzen Z2 Extreme」**が登場し、ASUSの「ROG Ally」次世代機などに搭載されることで、携帯型ゲーム機の性能を一段上のレベルへと引き上げます。
競合他社との「赤・青・黒」の戦い
市場ではIntelの「Core Ultra シリーズ3(Panther Lake)」や、Qualcommの「Snapdragon X2シリーズ」との激しい競争が予想されます。
• Intelは、Panther LakeですべてのモデルをCopilot+ PC対応とし、電力効率を改善しました。
• Qualcommは、第2世代Snapdragon XでNPU性能を最大85 TOPSまで一気に引き上げ、AI特化の姿勢を鮮明にしています。
AMDの強みは、「実用的なマルチタスク性能」と「圧倒的な内蔵GPUパワー」のバランスにあります。特にビジネスシーンでのビデオ会議(Microsoft Teams)とオフィスソフトの同時利用において、Intel Lunar Lakeより平均29%高速であるというデータは、実務ユーザーにとって大きな魅力となるでしょう。
結論
AMDのCES 2026での発表は、単なるスペックアップに留まらない、「ローカルAI実行環境」の民主化を象徴するものでした。Ryzen AI 400シリーズは、2026年第1四半期からAcer、ASUS、Dell、HP、Lenovo、さらには日本のNEC PCなどの各社製品を通じて提供される予定です。
PC選びにおいて、「AIで何ができるか」が問われる時代の幕が開きました。AMDの最新プロセッサは、その問いに対する最も力強い回答の一つとなるに違いありません。
たとえるなら、今回のAMDのラインアップは「高性能なエンジンを積んだハイブリッドカー」のようです。 通常の走行(日常タスク)では燃費(電力効率)を重視しながら、高速道路(負荷の高いAI処理やゲーム)に入れば、ターボチャージャー(NPUと巨大GPU)が即座に起動し、ライバルを置き去りにする加速力を見せてくれる。そんな、万能さと爆発力を兼ね備えた1台を選ぶような安心感が、新しいRyzen AIには備わっています。

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