はじめに:色覚特性は決して珍しいものではない
私たちの社会には、色の見え方が多くの人と少し異なる「先天色覚異常」を持つ人々がいます。日本においては、**男性の約5%(20人に1人)、女性の約0.2%(500人に1人)**の割合で見られ、40人のクラス(男女20名ずつ)であれば、統計上クラスに1人はいることになります。,,
この特性は決して「色が全く見えない」わけではなく、特定の色の組み合わせ(赤と緑、茶と緑、青と紫など)が環境や状況によって見分けにくいことがあるというものです。,, 本人は生まれた時からその見え方であるため、自覚がないことも少なくありません。,,
学校での色覚検査:過去の経緯と現在の状況
学校での色覚検査は、かつては健康診断の必須項目でしたが、2003年度(平成15年度)から必須項目から削除され、希望者に対してのみ実施されるようになりました。,, しかし、その結果、自身の特性を知らないまま成長し、就職活動の段階で初めて制限に直面して夢を諦めるというトラブルが全国で相次ぎました。,,
これを受け、文部科学省は2014年(平成26年)に通知を出し、**「児童生徒等が自らの特性を知らないまま不利益を受けることがないよう、より積極的に周知を図る必要がある」**として、保健調査に色覚に関する項目を追加するなど、検査の体制を整えるよう各学校に求めています。,, 現在は多くの自治体で、保護者の同意を得た上での希望者検査が実施されるようになっています。,
なぜ「早めに知ること」が重要なのか
色覚特性を早めに知るべき最大の理由は、将来の職業選択におけるミスマッチを防ぐためです。, 多くの職種では問題なく働けますが、一部の資格や職業では今も制限が残っています。,,
• 制限がある主な職業: 航空機操縦士(パイロット)、海上保安官、自衛官、警察官、消防士、海技従事者など。,,
• 注意が必要な業種: 印刷、塗装、繊維工業、料理人(鮮度判定)、薬剤師、看護師など、微妙な色識別が業務の重要部分を占める仕事。,,
ただし、近年では制限が緩和される動きもあります。例えば、鉄道運転免許に関しては2024年7月から基準が改正され、検査表で「異常」と判定されても、より実務的な「パネルD-15テスト」をパスすれば操縦に支障がないと認められるようになりました。 このように、正しい診断名だけでなく、**「どの程度の識別が可能か」という精度の高い判定(程度判定)**を知っておくことが、可能性を広げる鍵となります。,,
検査の種類と診断の流れ
学校で一般的に行われるのは「石原色覚検査表」などを用いたスクリーニング検査です。, ここで「異常の疑い」があった場合は、眼科医療機関を受診して精密検査を受けることが推奨されます。,
眼科では、検査表を用いた検査に加え、15個の色の駒を順番に並べる**「パネルD-15テスト」**などで異常の程度(強度か中等度以下か)を調べます。,, ほとんどのケースでは日常生活に支障はなく、自分の苦手な色の組み合わせを知り、対策(色以外の情報で判断するなど)を講じることで、多くのミスは回避可能です。,,
学校や家庭でできる「色のバリアフリー」
色覚特性を持つ子供たちが学校生活で困らないよう、**カラーユニバーサルデザイン(CUD)**の視点が重要です。,,
• 黒板の配慮: 緑の黒板に赤のチョークは非常に見づらいため、基本は白や黄色を使用する。,,
• 教材の工夫: 色だけで情報を伝えるのではなく、形、記号、名前を併記する。,,
• 周囲の理解: 色の使い方が違うことを「ふざけている」と誤解したり叱ったりせず、個々の感じ方を尊重する。,,
おわりに
色覚特性は、視力の良し悪しと同じように、その人が持つ一つの個性です。大切なのは、それを隠したり否定したりすることではなく、**「正しく知って、適切に備える」**ことです。,, 早いうちに自分の特性を理解しておくことは、自分らしい人生の航路を描くための確かな道標となるでしょう。,
色は、世界を彩る言葉のようなものです。たとえ見えている言葉(色)が人によって少しずつ違っていても、そのルールの違いをお互いに理解し、文字や形で補い合うことができれば、私たちは同じ景色をより深く分かち合うことができるはずです。

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