1. はじめに:アンテナ自作の楽しさ
アマチュア無線において、アンテナは電波の出入り口となる最も重要なアイテムです。市販品も多くありますが、自分の手で作り、試行錯誤しながら調整したアンテナで交信に成功した時の達成感は、何物にも代えがたいものがあります。今回は、シンプルながら奥が深い「1/4波長グランドプレーンアンテナ(GPアンテナ)」の魅力と、その製作のポイントを解説します。
2. グランドプレーンアンテナ(GP)の基本構造
GPアンテナは、別名「ブラウンアンテナ」とも呼ばれ、1/4波長の垂直エレメント1本と、その下部から放射状に広がる数本の1/4波長ラジアル(地線)で構成されます。 このラジアルが「鏡」のような役割を果たし、大地の代わり(等電位面)として動作することで、あたかも垂直ダイポールアンテナがあるかのようなイメージで電波を放射します。
3. ラジアルの本数と角度:理論と現実
「ラジアルは多いほど良い」 という説がありますが、これは主に地面に直接設置する場合の低周波帯(AM放送やHF帯など)に当てはまる考え方です。
• 本数について: 430MHzや1200MHzといった高い周波数の場合、ラジアルは3〜4本あれば十分に良好な動作をします。理論上はラジアルを増やして円盤に近づけるのが理想ですが、4本でも効率は十分に高く、8本に増やしても信号強度の差はごくわずかです。
• 角度について: 垂直エレメントに対してラジアルを水平(90度)に配置すると、インピーダンスは約37Ωになります。これを 約45度の角度に傾ける(下げる) ことで、同軸ケーブルの特性インピーダンスである 50Ωに近づける ことができ、SWRを下げやすくなります。
4. アパートやベランダでの設置工夫
郊外の一軒家と違い、アパートなどの限られたスペースでの運用には工夫が必要です。
• 手すりの活用: ベランダの金属製の手すりをRFグランド(高周波アース)として利用することも可能ですが、手すりの材質や形状によって能力が異なります。
• 設置の高さ: アンテナは周囲の障害物から離し、できるだけ高い位置に設置することが基本です。ただし、ラジアル付きのアンテナを建物のすぐ近くに設置する場合、周囲の影響を受けてSWRが不安定になることもあります。
5. SWRの測定と同軸ケーブルの重要性
アンテナが完成したら、必ず SWR(定在波比) を測定しましょう。SWRが1.0に近いほど、無線機からの電力が効率よく放射されていることを示します。
• 測定器の活用: SWR計や、さらに詳細なインピーダンスが測れる アンテナアナライザー を使うのが理想的です。共振周波数において、レジスタンス(R)が50Ωに近く、リアクタンス(X)が0Ωに近い状態を目指します。
• 同軸ケーブルの「電気長」: UHF(430MHz帯)など高い周波数では、同軸ケーブルの長さも無視できません。測定時にケーブルによる誤差を減らすには、波長短縮率を考慮した 「1/2波長の整数倍」 の長さでケーブルを用意することが推奨されます。
6. SWRが下がらない時のチェックポイント
もしSWRが2以下に下がらない場合は、以下の点を確認してください。
• エレメント長の微調整: 垂直エレメントを数ミリ〜1センチ単位で切り詰めながら、SWRの最小点が運用周波数に重なるよう調整します。
• ラジアルの角度: 角度を変えることでインピーダンスが変化し、マッチングが改善されることがあります。
• 周囲の影響: アンテナが建物の壁や金属物に近すぎないか確認してください。
7. まとめ:まずは作ってみよう!
GPアンテナは、針金ハンガーや安価な銅線など、身近な材料で作ることができます。たとえ理論通りにいかなくても、自分で工夫して「スイートスポット」を見つける過程こそがアマチュア無線の楽しさです。 失敗を恐れず、まずは1本作ってみることから始めてみませんか?最悪の場合でも、少しの銅線を無駄にするだけで、得られる知識と経験は一生ものです。
( analogy ) アンテナの調整は、楽器の弦を締めて音を合わせる「チューニング」に似ています。弦の長さ(エレメント長)や張り具合(周囲の環境)が適切に揃ったとき、初めてあなたの声が遠くの誰かへと美しく響き渡るのです。

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