2026年1月4日、ついにNHK大河ドラマ第65作『豊臣兄弟!』がスタートしました。 主人公は、豊臣秀吉の天下統一を影で支え、「天下一の補佐役」と称えられた弟・**豊臣秀長(小一郎)**です。
第1回放送「二匹の猿」では、永禄2年(1559年)の尾張国中村を舞台に、平穏な農民生活を送っていた小一郎が、数年ぶりに帰郷した兄・藤吉郎に振り回されながら、戦国乱世の荒波へと漕ぎ出す姿が鮮烈に描かれました。
小一郎の才能:戦ではなく「和」と「調整」の力
物語の序盤、小一郎は種もみの貸し借りを巡る村人同士の争いを見事に仲裁してみせます。 相手の言い分を立てつつ、双方が納得する和解案を提示する。この**「調整力」**こそが、のちに荒くれ者の武将たちを束ね上げることになる彼の最大の武器です。
一方で、小一郎は「戦は嫌じゃ」と公言する平和主義者として描かれています。 「戦に勝って銭を稼いでこい」と叱咤する姉・とも(宮澤エマ)や、手柄に沸く村人たちとは対照的に、彼は土とともに生きる慎ましい暮らしに満足していました。 そんな彼を無理やり戦国の表舞台へと引きずり出したのが、8年ぶりに村へ戻ってきた兄・藤吉郎でした。
清須の道普請で見せた、兄弟の「最強のシステム」
藤吉郎に連れられて向かった清須での道普請シーンは、本作のハイライトの一つです。 信長の命により急ピッチで進められる道路整備の中、土砂崩れというアクシデントが発生します。 逃げ出そうとする人夫たちを前に、小一郎は冷静に状況を判断し、チームを組んで効率的に作業を進めるよう的確な指示を出しました。
ここで興味深いのは、ビジョンを語り人を熱狂させる兄と、それを実務能力で具現化する弟という、豊臣政権を支えることになる「最強のコンビネーション」がすでに機能し始めている点です。 この作業中、小一郎は正体を知らぬまま織田信長本人と一緒に汗を流し、その働きを認められることになります。 小栗旬演じる信長の「じっとしていては欲しいものは手に入らぬ。自分の進む道は自分で切り開くのじゃ」という言葉は、小一郎の心に深く刻まれたことでしょう。
「わしが恐ろしかったんは兄じゃ」——ラストシーンの衝撃
しかし、第1回の結末は決して明るい成功譚では終わりませんでした。柴田勝家(山口馬木也)からかけられた盗人の疑いを晴らすため、兄弟は真犯人である間者・横川甚内を捕らえます。
「みんなから好かれたい」「もう見下されたくない」と弱音を吐いていたはずの藤吉郎が、次の瞬間、迷いなく暗殺者を切り捨てる。返り血を浴びた兄の顔には、後悔も躊躇もなく、ただ手柄への執着だけが宿っていました。
小一郎は、兄の温厚な笑顔の裏に潜む**「目的のためなら手段を選ばない狂気」**を直感します。 震える手を見つめながら彼が呟いた「わしが恐ろしかったんは兄じゃ」という言葉。 それは、これから兄と共に歩む道が、多くの血が流れる修羅の道であることを悟った瞬間の、戦慄の告白だったのではないでしょうか。
史実とドラマ:虚実が生み出す面白さ
本作では、秀吉にまつわる有名なエピソードが小一郎の手柄としてアレンジされている点も注目です。例えば「清須城の壁修理(本作では道普請)」の組分けエピソードは、一般的には秀吉の功績として知られていますが、ドラマでは小一郎のマネジメント能力として描かれました。 また、信長暗殺計画の阻止も、実際には丹羽兵蔵という人物の功績とされていますが、劇中では兄弟がその端緒を掴む形になっています。
脚本の八津弘幸氏は、秀長と秀吉の関係を「ドラえもんとのび太」に例えていますが、この第1回を見る限り、その関係性はより複雑で、危うい均衡の上に成り立っているようです。
まとめ:これからの『豊臣兄弟!』に期待すること
第1回「二匹の猿」は、テンポの良い展開の中に、戦国時代の過酷さと兄弟の深い絆、そして拭いきれない恐怖を共存させた見事な導入でした。 仲野太賀さんの安定した演技と、池松壮亮さんの怪演とも言える秀吉像が、今後どのような化学反応を見せてくれるのか目が離せません。
小一郎が感じた「兄への恐怖」は、今後どのように「献身的なサポート」へと変わっていくのか。あるいは、その恐怖を抱えながら、彼はどのように兄を制御していくのか。天下一の補佐役が歩む波瀾万丈のサクセスストーリーは、まだ始まったばかりです。

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