都心からアクセス抜群の東京湾奥。実は、この身近なフィールドが黒鯛(チヌ)が潜む、ヘチ釣りの一級ポイントであることをご存知でしょうか。現在、東京湾奥ではシーバス(スズキ)の個体数が減少傾向にある一方で、黒鯛は驚異的な増加を見せています。漁獲データによれば、2012〜2016年の平均4.2トンから、2017〜2021年には平均16.2トンへと大幅に増加しており、まさに今が狙い目と言えます。
本記事では、長年の経験と科学的な視点から導き出された「東京湾奥ヘチ釣り攻略法」を余すことなく解説します。
1. なぜ今、東京湾奥で黒鯛が釣れるのか
黒鯛が増えている背景には、環境の変化と彼らの高い適応能力があります。地球温暖化の影響で秋冬の水温が上昇し、黒鯛やその近縁種であるキビレの越冬が容易になったことが一因です。
また、黒鯛はシーバスに比べて環境耐性が高く、夏季の深刻な貧酸素水塊に対しても、表層へ移動することで巧みに回避します。さらに、特定の餌に依存するシーバスに対し、黒鯛は甲殻類、貝類、藻類まで食べる広範な雑食性(可塑性)を持っており、不安定な環境下でも安定して個体数を維持できるのです。
2. 釣果を左右する3大要素:場所・タイミング・エサ
ヘチ釣りは「魚に出会いに行く」攻めの釣りです。
【場所選び】 最も重要なのは**「潮の濁り」**です。
• 雨の直後: 急激な水質変化を嫌い魚が沖や深場へ移動するため、海側のエリアが狙い目です。
• 雨の数日後: 潮の濁りが戻り始めたエリアに絞り込みます。
• 晴天時: エサが豊富な河川区域(隅田川など)に分があります。
数釣りを狙うなら、辰巳運河や朝潮運河などの「魚の回遊ルート」を、大型の「年無し」を狙うなら障害物が絡む大規模河川を狙いましょう。
【タイミング】 「潮止まりは釣れない」のが鉄則です。下げ潮は下げ始めの短時間に時合いが集中し、上げ潮は満潮直前まで長く続く傾向があります。また、7月の特殊パターンとして、酸素濃度が下がる朝マズメよりも、日中の上げ始めに食いが立つことが多くなります。
【エサ】 圧倒的に釣果が出るのはカニやミジ貝(カワヒバリイガイ)、フジツボなどの「生エサ」です。これらは魚がエサを潰したかどうかで反応を確認できるメリットがあります。
3. タックルと仕掛けの最適解
「道具で釣果は変わらない」と言っても過言ではありませんが、**「自然に餌を落下させる」**ためのセッティングにはこだわりが必要です。
• オモリ: 「軽さが正義」です。エサがフワフワと落ちる状態が最も食いを誘います。ジンタンのG1〜G6を目安に調整しましょう。
• ライン: 至近距離の突っ込みを吸収する「伸び」があるナイロンライン(1.5号)が標準的です。
• リール: 回転性能よりも、手でリールを回して「糸ふけ」を作って落とす技術が重要です。糸が張った状態は振動が伝わり、魚に見切られやすくなります。
4. 実践テクニック:アタリは「目」で取る
ヘチ釣りでは、竿先の変化ではなく**「道糸のフケ(糸ふけ)」**の変化に集中してください。糸が「フッ」と緩んだり、スッと走ったりする僅かな変化がアタリです。アワセは強いアワセは不要で、竿先で重みを聞く「聞きアワセ」で十分です。
また、一箇所に固執せず、自転車を活用して広範囲を「ランガン」することが勝利への近道です。東京湾奥のポイント巡りには、シェアサイクルも最強の武器になります。
結論
東京湾奥の黒鯛ヘチ釣りは、状況を読み、積極的に移動し続けることで答えが返ってくるエキサイティングなゲームです。釣れない時は「魚がいない」と割り切り、条件の揃う場所を求めて移動しましょう。都会の景色をバックに、強烈な黒鯛の引きをぜひ味わってみてください。
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たとえるなら: 黒鯛ヘチ釣りは、**「都会のジャングルで行う精密な狩り」**のようなものです。獲物が潜む場所(壁際)を特定し、気配を殺して最適な罠(エサの自然な落下)を仕掛ける。一見シンプルですが、自然の法則を読み解くほど、その奥深さに魅了されるはずです。

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