中国製x86 CPU「兆芯(Zhaoxin)」の躍進:KX-7000の現在地と、次世代KX-8000が目指すAMD Zen 4への挑戦

1. はじめに:x86市場における「第三の極」兆芯とは 現在、世界のx86互換プロセッサ市場はIntelとAMDの二大巨頭によってほぼ独占されています。しかし、その影で独自の進化を遂げているのが、中国・上海に拠点を置く上海兆芯集成電路有限公司(以下、兆芯)VIA Technologiesと上海市政府が共同出資して設立されたファブレス半導体メーカーです。

同社の最大の特徴は、VIAが保有するx86ライセンスを継承している点にあります。これにより、知的財産権の懸念をクリアした上で、世界標準のソフトウェア資産が動作するx86互換CPUを中国国内で設計・製造することが可能となっています。中国政府が推進する「中国製造2025」や「信創(Xinchuang)」政策といった、外国技術への依存低減とITインフラの自給自足化において、兆芯は極めて重要な役割を担っています。

2. 現行フラッグシップ「KaiXian KX-7000」の実力と課題 兆芯が2023年末に発表した最新のデスクトップ向けCPUが、KaiXian KX-7000シリーズ(開発コード名:世紀大道)です。

このCPUは、物理的にIntelのLGA1700ソケットと同じ形状を採用していることで大きな話題を呼びました。これは既存のCPUクーラーとの互換性を確保するための戦略的な選択ですが、内部配線はIntel製とは異なるため、Intel用マザーボードで動作させることはできません。

スペック面では、8コア/8スレッド構成、L3キャッシュ32MBを備え、PCIe 4.0やDDR5/DDR4メモリをサポートしています。実際のベンチマーク結果(PC Watch等による検証)によると、以下の傾向が明らかになりました:

CPU性能: シングルスレッド性能では2017年発売のIntel Core i3-8100の約6割に留まるものの、8コアを活かしたマルチスレッド処理においてはCore i3-8100と同等か、それを上回るスコアを記録しました。

グラフィックス性能: 内蔵GPUの「ZX C-1190」はDirectX 12をサポートするなど現代化が進んでいますが、3DMark Time Spyのスコアは42点と極めて低く、依然としてエントリークラスの独立GPUには遠く及びません。

実用性: 事務作業やWebブラウジングといった日常的な用途であれば、もはや欧米製チップに完全に依存する必要がないレベルにまで到達したと評価されています。

3. 次世代「KX-8000」が掲げる野心的な目標 兆芯は2026年にさらなる技術的飛躍を遂げる**次世代CPU「KaiXian KX-8000」**の投入を確定させました。このチップは、中国製CPUが「周回遅れの互換品」から「国際的なメインストリーム」へと一気に差を詰める可能性を秘めています。

KX-8000の主な進化点は以下の通りです:

4GHzの壁を突破: 最大クロック周波数が4GHzに到達する予定です。これにより、これまで弱点であったシングルスレッド性能の劇的な向上が期待されます。

最新規格へのフル対応: PCIe 5.0およびDDR5メモリのサポートが明言されています。これは高速なNVMe SSDや将来的なAI処理の帯域幅要件を満たすための必須要件です。

ターゲットは「AMD Zen 4」: 兆芯の関係者は、KX-8000のパフォーマンス・ターゲットをAMDのZen 4アーキテクチャ(Ryzen 7000シリーズ相当)に置いていることを示唆しています。

仮にZen 4と同等の性能を実現できれば、西側のトップ集団との差はわずか2〜3世代まで短縮されます。これは「性能不足」を理由に欧米製を使わざるを得なかったハイエンド業務用PCやワークステーションの領域までもが国産チップに置き換わることを意味し、IntelやAMDにとっては巨大な中国市場におけるシェア喪失を加速させる脅威となるでしょう。

4. 今後の展望と課題 一方で、KX-8000の成功には高いハードルも存在します。米国の制裁下において、SMIC等の中国ファウンドリが、最新のEUV(極端紫外線)露光装置なしに、高クロックかつ微細なZen 4級のチップを経済的な歩留まりで量産できるかは不透明です。また、ハードウェアが追いついたとしても、GPUドライバの品質やソフトウェア・エコシステムの最適化という課題が残ります。

5. 結論:中国半導体自立の象徴として 兆芯の歩みは、単なる性能追求ではなく、国家的な**「供給網の安定と自給自足」**という目標に直結しています。KX-7000で見せた着実な進化と、KX-8000で掲げられた野心的な目標は、もはや世界の半導体市場において無視できない勢力となりつつあることを示しています。2026年、KX-8000が実際に登場する時、世界のCPU市場の勢力図は書き換えられることになるかもしれません。

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この記事を書いた人

電子機器の試作会社、老舗出版会社、通信系IT企業を経由して、現在は兼業ブロガー。SDGsに貢献しつつ、生活の中で課題をもって購入した商品のレビュー、プチ旅行の紹介、忘れつつある記憶の記録など、おおむね個人の趣味を綴ったブログにしたいと思います。

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