1970年代、日本のアマチュア無線界が大きな進化を遂げる中、当時の若年層(ヤングハム)の心を鷲掴みにした一台の無線機がありました。それが、1973年に**松下電器産業(現・パナソニック)**がアマチュア無線市場への参入第1号機として発売した、50MHz帯AM/FMポータブル機「RJX-601」です。
今回は、8年間にわたる異例のロングセラーを記録し、今なお愛され続けるこの名機の魅力を深掘りします。
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1. 家電メーカーならではの洗練された「メカニカルデザイン」
RJX-601を語る上で欠かせないのが、その美しい外観です。黒の結晶塗装を施した筐体に、BCLラジオ(クーガーシリーズなど)にも通じるメカニカルな操作パネルは、従来の「通信機」という枠を超えたスタイリッシュさを備えていました。
その優れたデザイン性は高く評価され、発売開始の1973年度にグッドデザイン賞を受賞しています。また、製造時期によってマイクの形状が異なり、1974年以降の変形六角形タイプのマイクはその形状から「棺桶マイク」の愛称で親しまれました。
2. ライバルを圧倒した「驚異のスペック」
当時の50MHz帯は「入門バンド」と呼ばれ、アンテナの設置が容易で、スポラディックE層(Eスポ)発生時には長距離通信も楽しめるオールマイティな周波数帯でした。RJX-601は、先行する他社製品に対して圧倒的なアドバンテージを持って登場しました。
• 50~54MHzのフルカバー: 他機種がバンドの一部しかカバーできなかったのに対し、本機は50MHz帯全域をAM/FMの2モードで運用可能でした。
• 完全1VFO方式: 送受信でVFOが独立していた他機種とは異なり、受信した周波数で即座に送信できる操作性の高さは大きな優位性となりました。
• 3Wの高出力: 多くのポータブル機が1W出力だった時代に、**3W(1W切り替え可)**というハイパワーを実現していました。
3. 改造やメンテナンスのしやすさ
本機はファンによる改造のバリエーションが豊富なことでも知られています。 ダイヤル校正用水晶を交換してFM呼出周波数の51.0MHzでゼロインしやすくしたり、21MHz帯のトランスバーターへ改造してSSB/CWモードの運用を試みるなど、自分好みに手を加える楽しみがありました。
また、現在はパーツ類が廃止品種になっているものもありますが、代替品種が多数存在するため、比較的メンテナンスが容易であることも、長年愛用者が絶えない理由の一つです。
4. 現代でも「現役」として楽しむために
21世紀になった今でも、RJX-601は50MHz帯AM愛好家の間で現役で使用されています。AMの変調方式が「終段コレクタ変調」であるため、音質が良く、深みのある変調をかけられるのがその大きな魅力です。
ただし、現在この無線機で開局・増設申請を行う場合は注意が必要です。2005年のスプリアス規格改正により、現在は日本アマチュア無線振興協会(JARD)などの「スプリアス確認保証」を受けることで免許申請が可能となります。本機はJARDの保証対象リストに掲載されているため、適切な手続きを踏めば今でも合法的に運用を楽しむことができます。
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RJX-601は、まさに当時の若者たちが**「広い無線界へ漕ぎ出すための、丈夫で美しい帆船」**のような存在でした。
中古市場やオークションでも比較的入手しやすいため、かつての憧れをその手に取り、50MHz帯のノイズの中に耳を澄ませてみてはいかがでしょうか。

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