アマチュア無線の楽しみの一つに、アンテナの自作があります。特に430MHz帯は波長が約70cmと短いため、アンテナ本体がコンパクトに収まり、身近な材料で高性能な指向性アンテナを作ることが可能です。今回は、自作八木アンテナの構造から、製作上の注意点、そして動作の鍵となるマッチング方法について解説します。
1. 八木・宇田アンテナの基本原理
八木・宇田アンテナは、1920年代に東北帝国大学(現在の東北大学)の八木秀次教授と宇田新太郎氏によって発明されました。その構造は非常にシンプルで、主に放射器(ラジエーター)、反射器(リフレクター)、**導波器(ディレクター)**という3種類の素子(エレメント)で構成されています。
• 放射器: 電波を直接送受信する心臓部で、通常は1/2波長のダイポールアンテナが用いられます。
• 反射器: 放射器より少し長く、電波を前方に反射させる役割を持ちます。
• 導波器: 放射器より少し短く、電波を特定の方向へ導き、指向性と利得を高めます。本数を増やすほど指向性は鋭くなります。
2. 材料選びと加工の精度
430MHz帯のアンテナ製作において最も重要なのは加工精度です。波長が短いため、わずか数ミリの誤差が特性に大きく影響します。
ブーム(支柱)には、軽量化のためにアルミ材や、加工しやすい木材、樹脂製の「カブセ」などが利用されます。エレメントには直径4mm〜6mm程度のアルミパイプが一般的です。 最近の製作例では、**ホームセンターで入手可能な塩ビパイプ(VP-13)**をエレメント固定具として加工し、テンプレートを用いて穴あけを行うことで、初心者でも垂直出しや位置決めを正確に行えるよう工夫されています。
3. マッチング方式の選択
八木アンテナを同軸ケーブル(通常50Ω)に接続する際、そのままではインピーダンスが合わず、高いSWR(電圧定在波比)の原因となります。これを解決するためにマッチング回路が必要です。
• ガンママッチ: 放射器を分割せず、一本のパイプのまま給電できる方式です。テフロンチューブと真鍮ロッドを用いた同軸構造のキャパシタを利用することで、現場での微調整が容易になります。
• ヘアピンマッチ: 給電点にU字型のワイヤーを取り付け、インダクタンスを付加することで50Ωに整合させます。
• 直接給電: 素子の間隔や長さをシミュレーションで最適化することで、マッチング回路なしで直接50Ω近辺に追い込む「W1JR方式」なども存在します。
4. SWRの追い込みと調整
組み立てが完了したら、アンテナアナライザやSWR計を用いて調整を行います。 430MHz帯では、**周囲の環境(壁や地面、さらにはブームに使った木材の水分)**さえもインピーダンスに影響を与えることがあります。調整の際は、できるだけ実際の運用状態に近い高さに掲げることが理想です。
放射器の長さ調整は、鉄工ヤスリで両端を0.5mm単位で削っていくなど、慎重な作業が求められます。もし削りすぎて周波数が高くなってしまった場合は、先端に一回り細いパイプを差し込むことでリカバリーが可能です。
5. まとめ
八木アンテナは、自作することでアンテナ理論への理解が深まるだけでなく、圧倒的なコストパフォーマンスで強力な電波を飛ばすことができます。 例えば、利得が10dBあれば、10Wの送信出力でも理論上は100W相当の電力で電波を飛ばしていることになります。限られたパワーを効率よく活用できるのが、このアンテナの最大の魅力です。
身近な材料で「魚の骨」を組み立て、お空の上で遠くの局と繋がる喜びを、ぜひあなたも体験してみてください。
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参考文献 pockyの木工ライフ, 430MHz 8eleYAGI 月刊FBニュース, 第43回 430MHz 6エレ八木アンテナの製作 FARE-Net 第69号, 八木アンテナを作ろう! アンテナについて, JO1NDG 東北大学アマチュア無線部誌 2021.11 Reddit r/amateurradio, Yagi tuning discussion Wikipedia/ライフハウジング, 八木式アンテナ解説

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